日食なつこ
日が暮れて開け放った窓の外空気が表情を変える 狭い部屋 畳におちるオレンジが見る間に滲んでく 室内灯じりじり焦げて落ちる夕日に挑むみたいだ どちらが勝つどっちが負けると浮世離れをとげたふり (またそんなこと言って) って笑う君の声を聞いたような だめだめ、 夜が来たら星を見ようと心決めてたはずなのに 外に出たらご覧の雨さ 僕の心の火が消える どこに逃げても無駄 この街にはそこらじゅうに さよならした君の残像が 色濃く焼き付きすぎて 夏の月が照らす夜道をふらつく僕はかげろうみたいだ 泣き笑いを繰り返す心にとりあえずはついて歩く 何をしてみても無駄 この街じゅうを駆け巡る もう帰らぬ君の残響を また追いかけ回すだけ 日が暮れて開け放った窓の外空気が表情を変える 8月32日は辿りつけなかった夏の向こう 目が覚めたら今日はまだ夏の只中 隣には君 うだるような幸福に犯されて笑う 有り余る夏 そんなふたりの残像が色濃く焼き付きすぎて